52:名無しさん@おーぷん : 2016/01/15(金)09:06:32 ID: ID:X3u
要約すると「具合は悪いままだが、意識の方がハッキリとなった、ボケが治った?(医者も疑問)」と言うことだった。この何年間も大ボケだった祖父の、あの大ボケが治った?
にわかには信じがたい話だった。ただ何度も同じことを俺は尋ねていたと思う。
52:名無しさん@おーぷん : 2016/01/15(金)09:06:32 ID: ID:X3u
祖父は、自分の誕生日・仕事(昔の仕事内容)・今の自分の状況状態・家の住所電話番号、他
これらをハッキリと答えられたとの事だった。
翌日、どうしても朝出て提出しなくては行けない書類を会社に届けてから病院へ向かった。
上司の方は祖父の具合がよくないことを深く理解してくれている人なのと、
大人の事情になるが、この時あまり社員は出勤しないほうが会社に得になる状態だった。
だからか、この日は提出と事情説明にかかった時間分だけ働いたこととして、以降早上がりとなった。
病院に着きいつものように、あの病室へ向った。
祖父がいる場所には仕事先から直接来たという父と母、
そして涙目で「うんうん」と嬉しそうに頷いている祖母がいた。
祖母が頷く先には、いつもの様に仰向け状態で寝ていた祖父の姿はなく、
ベットの背中部分をしっかりと上げ、どっしりとイスに腰掛けているかのように座る祖父がいた。
人工呼吸器でもサイズが一回り小さくなったマスクをした祖父がいる。
祖父「お、○○!よく来たな!」
俺の姿を見るなり祖父は元気よく俺の名前を呼んだ。
実際には声も小さく若干かすれ気味だったが、それでも覇気があった。
左手を上げたったようだが、祖父の胸下までしか手は上がらなかった。
祖父はそれを見ると「すまねっ、全然体動かねーんだ」とニコニコして言った。
俺はしっかりと祖父に近づけないまま、遠目に見ていると、
祖父は近寄ってこないことに気がついたのか、一瞬ハッとした表情を浮かべ、
祖父「そうだよな。なんと言えばいいか。とにかく長い事迷惑かけたな……ありがとう」
祖父は神妙な顔を浮かべた後、体を前に倒したら。
そしたら「おお、おおおおっ」とか言いながら祖父はそのまま前倒れしそうになり、祖母が支えた。
祖父は「お前に支えられるほど体が軽くなっちまったなぁ」と、
祖母は「ええそうですね。まったくうらやましい」と。
それを聞いて母と父は小さく笑っていた。
53:名無しさん@おーぷん : 2016/01/15(金)09:17:17 ID: ID:X3u
今までは祖父の横に座ることさえ面倒に思えていたが、この時は喜んで座りに行くような、
本当に小さいころ祖父母に喜んで合うかのような感覚だった。
祖父は普通に父母と会話するし、祖母とも会話している。
体が如何に動かないか、思うように体が動かなさすぎて悲しくなる、
どうやって俺はこの体と付き合ってきたんだ、こんな体と付き合ってきたお前らには迷惑をかけたことだろう
今までの酒癖やタバコが今になって体に影響出たのか?おう□□(父)酒タバコやめろよ、
そういやお前は酒タバコをあまりしない質だったっけか、アハハハハ
途中咳き込んだりしていて、休み休みに喋っていたが、祖父はとにかく喋っていた。
ある程度頃合いを見計らっていたのか、祖父の担当医が現れた。
昨日電話をかけてきた先生だ。
祖父は移動できないので「祖父さんは待っていてくださいね」と言う。
祖父は「こんな体じゃ何処にも行けねーわw」と笑う。先生が若干素で笑った。
56:名無しさん@おーぷん : 2016/01/15(金)09:31:34 ID: ID:X3u
医者「つまり、何が切っ掛けでああなったか分からないです」
先生が言うには昨晩、夜遅くのこと。
祖父からナースコールがあった。そして看護師が見に行くと、
ナースコールを握り、そして目を開けていた祖父がいたそうだ。
看護師としては、この部屋の患者がナースコールを押すのは滅多にないことだったので非常に驚いたらしい(二年ぶり?)
看護師は決まり文句「祖父さんどうしたのですか?」と聞くと、
祖父はかすれ声で「ここは何処ですか?」と聞き返したそうだ。
看護師さんは「病院ですよー」と聞くと、祖父は「どこの病院で、俺はどうしたんだ?」と聞いてきたらしい。
看護師さんは病院名を言った所、祖父は「何県だ」。
そして何県か答えると「近畿地方であっているか」と答えたらしい。
県名は伏せるが(こんな特徴的病院がそこしかない為)、まさに正解。
違和感を覚えながらも看護師はとにかく担当医の先生を呼び、
先生はボケ老人と同じように接していて気がついたそうだ。
「この人ボケがない。どうしたんだ?」と。
62:名無しさん@おーぷん : 2016/01/15(金)09:47:12 ID: ID:X3u
医者「こんな話をして非常に驚かれることでしょうが……
とにかく意識の方は、先ほどの様子も見て、健全者と同じか少し低い程度でしょう。」
そこで父はあろうことか、
父「こういうことはあるのですか?所謂、なになにの瀬戸際で……」
母がバンッと父の脇腹を殴ったが、誰も父も特に気にすることはなく
医者「まあ私として……なくにしてあらず、でしょうか。
実際、目が開いた。小さな声で名前を呼んだ。手を握り返してくれた。何かを喋っていた、など
瀬戸際での出来事は実際聞きます。
悲しい話、医者たちの間でも、実際でも、大抵は勘違いとのことですが。
ただ事故から驚異的回復を見せたなど、聞きますしありますからね。
それに祖父さんに今起こっていることは、流石に勘違いでは済まないことでしょう」
父も母も俺も「はあ……?」と驚嘆の声を漏らす中
祖母「あの人は往生際が悪いですからね……」
といった瞬間、思わず俺らは笑ってしまった。そういう話じゃないでしょ、と。
先生も必死に笑いを堪えている様子だった。
64:名無しさん@おーぷん : 2016/01/15(金)10:03:45 ID: ID:X3u
祖父は俺らの姿を見ると嬉しそうにニコニコしていた。
その後、祖父が第一に「会社の方なんだが……アレか。俺がボケている訳じゃないよな?」と聞いてきた。
その言葉のニュアンスを読み取るのは難しかったが、父と祖母は。
父「覚えているのなら、その通りです」
祖母「あのバカ息子がね……」
たったコレだけの言葉ですべてを察したのか、祖父は目線を上げ遠くを眺めた。
一度だけ見た祖父が祖母と喧嘩した後、
何かを思いつめるようにタバコを吹かしていた姿と同じだった。
その時、祖父が「思いがごちゃ混ぜな時は遠くを見るのがいい。広く見るのがいい」と教えてくれた。
もしも窓際だったら外を広く眺めていたことだろう。
妙な沈黙な後、祖父が重い口を開いた。
祖父「そうか、潰したか。あのバカが。何をした」
淡々としかしゃべれない様子の祖父は、若干目を赤くして、震えていた。
65:名無しさん@おーぷん : 2016/01/15(金)10:20:22 ID: ID:X3u
67:名無しさん@おーぷん : 2016/01/15(金)10:39:47 ID: ID:X3u
叔父の元から会計さんが去った話を聞いた。
聞けば意見の食い違いとの事だった。
「アナタの工場を世界に通用するようにしませんか?
発展途上国に工場を作り、この工場の技術を世界に……」と、聞くに怪しい話。
コレをおかしいだの、お金の流れがおかしいだの言い出したので、
会計さん(ベテラン)をクビにしたそうだ。
ちなみに叔父とその営業社員とだけで半年練っていた計画らしい。
そう叔父は豪語していたが、それに対して我が家は激怒していた。
そこから叔父との縁が露骨に薄くなった。
しばらくして発展途上国に工場を建てられた。
そこに視察に行ったりなどもして、お見上げを持って挨拶にも来た。
「どうだ、これでオヤジも喜ぶだろう」とか言っていた。
そのくせオヤジには全く会おうとしなかったが、
会社を経営することがオヤジの介護だとか言っているような奴にそんなのは期待していない。
話は逸れたが、工場が建った後が大間違いと言うか、バカ過ぎた。
周りが反対していた通りのこととなった。
68:名無しさん@おーぷん : 2016/01/15(金)10:48:24 ID: ID:X3u
69:名無しさん@おーぷん : 2016/01/15(金)10:49:10 ID: ID:X3u
日本から輸入した機材の大半が、自称運び屋(引っ越し屋?)に盗まれたのだ。
ここで痛手も負いながらも、元を取れると思い更に無理して投資。
次にその国の法律に触れる違法行為をその工場で行っていた。
(詳しくはわからない。違法売買の現場になったとかだった筈)
さらに従業員同士のいざこざで殺人事件まで起こった。
その責任がすべて日本の叔父の元へ。
先任工場長であるその人は、責任を感じてさっさと辞めていった。
慰謝料など、その他諸々叔父から受け取った後に。ちなみに、その後は行方知れずです。
それで経営困難になり海外の工場は潰れた。
そもそも聞けば評判の悪かったそうだ。主に従業員の質が悪いと。
ここまで言えばオチは簡単である。
実際には、そこまで酷い賠償責任じゃなかったのである。
殺人事件に関しては起こっていなかった。ただ腕を切る怪我は多々あったそうだが。
これらは長年付き合ってきた弁護士さんの調査により判明した。
そしてその弁護士さんは叔父へ一言「騙されていましたね。」
バカな叔父はここで自覚したそうだ。
70:名無しさん@おーぷん : 2016/01/15(金)10:50:07 ID: ID:X3u
賠償請求だって言葉がわからないバカである叔父な上に、
まともな会計が居ないから、ポンポン出してしまう。
当時叔父の味方をしていた弁護士だって向こうが雇った弁護士。
そもそもその雇った弁護士が本当に弁護士かどうかもわからない。
会社は負債を抱えているし、行政は100%助けてくれるほど甘くはない。
従業員への未払いの給料。工場に残った多額の借金。
せめて自己破産してから叔父が消えればよかったが、そうはならなかった。
自己破産に関しては長い付き合いの弁護士さんが居なければ本当に危なかった。
もうその頃には自己破産もせず叔父は数百万持って雲隠れしてたし、
我が家に多額の借金が振りかかる寸前だった。(一応連帯保証人であったし
72:名無しさん@おーぷん : 2016/01/15(金)10:54:25 ID: ID:X3u
その後、大分借金も小さくなったが、やはり払いきれる、そもそも払おうと思えない借金が残った。
危うく俺は大学いけなくなるところだった。
当時、俺はバカにもカッコ付けて「構わない」とかほざいていたが、そこは祖母と母が許さなかった。
弁護士さんが解決策を教えてくれたのもあり、俺は大学にはいけたが。
母親が責任者(娘であり跡取りの資格がある)になり「借金を継いだ」。
そして母親は父親と離婚し、自己破産したのだ。(クリーンな工場が買い取る条件でもあったし
ちなみに俺の親権は父親にある。
こうなると母親は実家に住めない話になるのだが、『祖父の介護』を理由に家に残れた。
実際、父親は夜遅くまで働いている人だし、介護できるような人ではない。
国がそれを認めてくれるかどうかだったが、役所はすんなり認めてくれた。
おそらく弁護士さんの手腕もあったのだろうと思う。
……この話、大分グレーな話だよな。話していいのかな。
ちゃんと書類も審査も全部通ったし、裁判所の許可も降りたことだけど、やっぱりグレーだよな。
73:名無しさん@おーぷん : 2016/01/15(金)10:55:58 ID: ID:X3u
テレビでも言われている事だが。
74:名無しさん@おーぷん : 2016/01/15(金)10:56:22 ID: ID:X3u
77:名無しさん@おーぷん : 2016/01/15(金)11:03:22 ID: ID:X3u
そこでようやく俺は、印象深い話だったと言うこともあり、
本当にボケ老人ではなく「祖父」に戻ったのだと理解した。
と言うか、ここまで質疑応答できる祖父が、あのボケ老人な訳がない。
なんだかんだ、
「祖父がいたから家に残れたということ感謝している」に、母親が言うと。
祖父は「そんなことで感謝される筋合いも、感謝されたくもねぇ。
むしろ俺が感謝するべきだ。お前には本当に辛い苦労をかけた。本当にありがとうな」
そういうと母親の手を取った。この時も「ろくに動かねぇ」と嘆いていた。
母親は声だして泣いていた。
祖父も自己破産の重さは理解しているし、それを一番感じているのは他でもない母親だ、と俺らへ言った。
ただこの中で一番申し訳ないのは俺(祖父)だとも言っていた。
祖父は「今この場に叔父が現れたら殺す」とつぶやいていた。
祖父は母親を無言で励ました後、母親が泣き止むまで以降沈黙していた。
何を考えていたかわからないが、色々と深く考えていたと思う。
80:名無しさん@おーぷん : 2016/01/15(金)11:11:01 ID: ID:eEc
81:■忍法帖【Lv=5,テンタクルス,dQ0】 : 2016/01/15(金)11:14:38 ID: ID:Cwc
82:名無しさん@おーぷん : 2016/01/15(金)11:18:41 ID: ID:X3u
ちょっと休憩(´・ω・`)気分が落ちてきてしまった。
>>80
友人にも同僚にもそう言われるよ
>>81
会社はなくなっているし、そもそも外国人なので国際逃亡されている恐れが……
一応詐欺事件として調査してもらったけど、当事者である叔父がいないしね。
形としての被害届、までしか期待できない。そもそも受理されただけで万歳モノだったりするんだ。
そしてとっ捕まえても戻ってこれるものじゃないしね。
それよりも叔父だよ。アイツは捕まえない、と。
昔の縁で東北に逃げたっぽい話は聞いているんだけどなぁ……