書き溜めてるので適当に投下していきます。
俺 26 ブサメン ブラック会社勤務 DT
女性 23 可愛くもなくブサイクでもない普通の子(年齢は色々あった後に知った)
書き溜めてるので適当に投下していきます。
俺 26 ブサメン ブラック会社勤務 DT
女性 23 可愛くもなくブサイクでもない普通の子(年齢は色々あった後に知った)
俺が窓際の席に座ると後から入ってきた人もそそくさと座席に座り始める。
そして、後からやってきた一人の女性が俺の隣の席に座った。
………。
俺は女性を避けるように窓際に寄った。
…。
まぁ、所詮他人である。
むしろあまり構わない方が相手の為だと思い、
横目でチラリと女性の状態を確認したあとはガン無視を決め込んだ。
スマホを取り出し、適当にネットを眺めていた。
そして電車が動き出して10分が経った頃、事態は起こった。
横でうずくまる女性が小さくえずき出したのだ。
二人掛けタイプなので周りの乗客は気付いていないが隣に居た俺は気付いた。
吐く。
この人、絶対に吐く。
あとどれくらい保ってくれるかわからなかったが、そうもたないだろうと思った。
今の状況が、もし出勤時の出来事であれば俺はこの場から逃げていた。
ただでさえ憂鬱な仕事前に、隣でゲロなんて吐かれたらたまったものではない。
だが俺は帰宅時における気の余裕と、
偶然持ち合わせた良心が丁度いい具合に混ざり、
慌てず女性を介抱するべく行動に移った。
次に、窓側に座っていた俺の方に女性を移動させようとした。
酒が入っているので羞恥心があるかどうかはわからなかったが、普通の人間ならば電車の中で嘔吐物と異臭を撒き散らし周囲の注目を浴びるなんて完全にトラウマものである。
窓際ならば周囲の視線も若干ではあるが遮れるだろうと思っての行動だったのだが…
女性の限界は目前だったらしい。
今にも吐きそうだった。
もう間に合わない…。
俺は右手のポーチを半ば強引に女性の口に押し付け、
女性の肩に左手を回して引き寄せた。
女性は俺の両膝の間に顔を突っ込む体制。
………男女による「アレ」に見えなくもない卑猥な体制である。
少しでも周囲の目から遠ざける為に咄嗟にとった行動だったので不可抗力だ…。
…うん。
すると、その体制になったまさにその時、女性が小さな声で
女性「グエ…ッ!」
女性「ゥエエゴブ……」
息を刹して吐き始めた。
一応周りに人がいるという意識はあったらしく、
声を出さないように努めているみたいだった。
が、一度吐き始めたらなら無理に止めたりせずに全部吐いてしまった方がいい。
俺は空いていた左手で女性の背中を摩った。
吐いている人の背中を摩るなんてした事なかったのでなんとなく新鮮な感じだった。
女性の嗚咽が周りに漏れ、近い場所にいた乗客がこちらに冷ややかな視線を送り始め、一部は離れ(逃げ)始めた。
俺は目が合った乗客に申し訳なさそうにぺこりと頭を下げた。
状況的に女性と俺が知り合いのフリをした方が自然だと思ったので女性を心配する素振りで耳元へ近寄って
俺「大丈夫、大丈夫。」
と何が大丈夫なのか自分でもよく分からない慰め言葉を呟きつつ背中を摩ってあげた。
右手のポーチは水分の許容量を超えたらしく滴っていた。
汚臭は思ったほど酷くなかったがさすがに無臭とはいかず、独特な臭いが周りに漂い始めていた。
俺は摩っていた左手を止め、自分のバッグの中に放った香水を取り出し、辺りに無雑作に振りまいた。
持ち歩いていた香水が柑橘系のフレッシュなタイプだったので消臭の役割も十分果たしてくれたと思う。
バッグに香水を戻し、再び女性の背中を摩り始めた時に、俺の右手首がピチャピチャと濡れた。
どうやら女性が泣いているらしかった。
そういえば吐く時って涙出るよなぁと感傷に浸っていた。
手首にポタポタ落ちてくる涙がなんとも切なかった。
俺が降りるはずの駅はもう間もなく着く頃だが、
この女性を放って降りる気にはなれなかったのでやむを得ず乗り続けるのを覚悟した。
それより、この状況で見て見ぬ不利をする周りの人々にさすがにやや苛立ち始めていた。
でも無理もない。俺だって逆の立場であれば見て見ぬ不利をしていただろうし…。
はぁ…。
さて、これからどうしようかと途方に暮れそうになっていた時。
乗客「大丈夫?」
と、俺が降りるはずだった駅から乗り込んできた40代かそこらの男性が声をかけてきてくれた。
俺「あ、はい。すみません…。」
乗客「その子具合悪いの?車掌さん呼ぼうか?」
おお。なるほど。そんな手があったか。
俺「すみません。お願いできますか?」
乗客「えぇ、呼んで来ますんで待ってて下さい。」
心優しい乗客のおいちゃん。ありがとう。
おいちゃんは言うとすぐに後方へ向かって行った。
おいちゃんが車掌さんを連れてくるまでの間、俺は女性の背中を摩っていた。
女性も既に吐き尽くしたのか、嗚咽もおさまり呼吸も整っていた。
しかし、恐らくは恥ずかしくて顔を上げられないのだろう。
ずっとうつ伏せのまま俺の右ひざにおでこを乗せ固まっていた。
しばらく女性を観察して大丈夫そうだと確認した後、
俺がポーチの口をそっと閉めた時に車掌さんが現れた。
車掌「大丈夫ですか?お客様。」
俺「えぇ、大丈夫です。」
車掌「コレ使って下さい。」
厚めのビニール袋を俺に差し出してくれた。
既にマスクを着用した車掌さんはこれまた持ってきていた毛布のようなタオルケットを女性に被せ、
そしてこれまた持ってきていた消臭剤やら消毒剤やらを辺りに振りまいていく。
(……慣れてるな…。)
きっと車内で吐く人ってそれなりにいるんだろうなと思った。
車掌さんは俺に対して
「次の停車駅で駅員を呼んで待機させているので一旦降りましょう」
と促し、電車の後方に戻っていった。
どうやらここへ来る前に次の停車駅へ連絡しておいてくれたらしい。
完璧過ぎるぞこの人……。 社会人としてすごく劣等感を抱いた………。
程なくすると次の駅に近づいてきた為、俺はタオルケットを女性の頭の上に改めて被せ直した。
顔さえ見られなければ起き上がっても恥ずかしさは随分軽減出来る筈である。
タオルケットの上から女性に話しかけた。
俺「次、降りますよ。」
女性から返事はなかったが頭が少し頷いた。
扉が開きホームへ出ると、連絡を受けていたのであろう女の駅員さんが立っていた。
ほとんど吐き尽くして酔いも冷めたのか女性の足取りはそんなに乱れていなかった。
女性は駅員さんに具合を聞かれた。
が、まだ喋る余裕はなかったらしい。
俺「えっと・・・」
俺は女性の代わりに駅員さんに状況を説明した。
せっかく早く帰れたのにタイムロスだなぁ…と心無い事を思いながら…。
手短に説明を終えた俺は
俺「これ、バッグ。」
ずっと持ったままだった女性のバッグをそっと返した。
俺「すみません。自分はこれで失礼します。」
と言いそそくさとその場を後にした。
駅員「どうもご協力ありがとうございました。」
と駅員さんにお礼を言われ軽く会釈し、女性にも視線を送った。
女性も駅員に合わせて小さく頭を下げていた。
女性にも会釈を返し、反対側のホームへ向かった。
途中、男子トイレに入り、手洗いとうがいを済ませた。
どうやら女性は駅の控え室のようなところへ誘導されて行ったらしい。
…やれやれ災難だった。
ちなみにポーチは車掌さんにもらったビニール袋にぶち込み処分してもらった。
あの小物入れの代用品をまた探さないと…。
やってきた逆方面の電車に乗り込んだ俺はスマホを使いAm○zonで物色を始めた。
―
それからしばらく経ったある日の事。
俺は相変わらず残業の毎日を送っていてその日も会社を出たのは夜の11時過ぎだった。
終電の1つ前の電車に乗るのがもはや日課になりつつある。
人がポツポツとしか居ない駅のホームで電車を待つ。
―すると
ふと横から視線を感じた。
視界ギリギリのところで人の顔がチラチラ見切れる。
第六感とかではなく、完全に俺を2度見、3度見していた。
俺はチラ見する人に視線を移した。
視線を送っていたのは女性…。
…
あ…。
本来であれば他人と偶然にも目が合ってしまった場合、すぐに視線を外すのだが横にいた女性は以前、電車内でゲロった女性となんとなく雰囲気が似ていた。
ので、疑念のような視線を送ってしまった。
すると女性が
女性「あ、あの」
話しかけられた瞬間「あぁ、やっぱりあのゲロった人だ」と確信した。
実のところ逃げ出したかった。
知らんぷりをしてしまいたかった。
が、返答した。
俺「……はい。」
女性「こ、この前、電車で………の方ですよね?」
ずいぶん省略された質問だったが、無理もない。
俺はコンマ数秒悩んでから覚悟を決め…。
俺「あ……。はい。…もう具合、大丈夫ですか?」
あれから数日経っているのだからまだ具合が悪いわけがない。
ただ、返答としては間違っていなかったらしい。
女性「やっぱりそうですよね?!本当にご迷惑おかけしました。」ペコッ
返答一発目で物凄く丁寧に謝られ、俺は密かにホッとした。
改めて女性を見ると随分物腰の柔らかそうな人だった。
美人とか可愛いとかいうタイプの顔ではなかったが、おっとりした優しげのある顔だった。
なんだかんだで、あの日は最初から最後まで女性の顔はほとんど見えなかったからなぁ…。
俺「い、いいえ…俺なんもしてないですよ。」
女性「そんな事ないです。本当に助かりました。」
元々女性と話すのは得意でもなく、職場も年配のおばさん以外に若い女性は居ないので俺は少し緊張していた。
丁度その頃、待っていた電車がホームに入ってきた為、俺と女性は電車の中に乗り込んだ。
空席はたくさんあったが、なんとなく扉横の隅にある手すりに?まり立っている事に決めた。
すると女性も俺に添う形で近くの取っ手に捕まって俺に喋り始めた。
女性「いつもこんな時間まで残業とかされてるんですか?」
俺「あ、はい。最近はほぼ毎日ですね…。 えっと…、」
女性「はいw 私も残業です…w でもまぁ今日はたまたま、というか。」
俺「あぁ、そうなんですか。お仕事、何されてるんですか?」
女性「っと…。その。ゲームを作ってます。」
俺「ゲーム?」
ゲームという言葉に思わず反応してしまった。
俺はけっこうゲーム好きである。
女性「はい。PS3とかのソフトを作ってる会社で働いてます。」
俺「おー、凄いっすね。俺もゲームやりますよ。」
女性「本当ですか?!普段どんなのやってらっしゃるんですか?」
俺「…オンラインゲームとかよくやってますね…。」
女性「お〜・・・。」
・・・。
どうやら女性が期待していた答えではなかったらしい。
それが今の嫁です。
とかないよな?
ないよな、、、?
俺「どんなゲームを作ってらっしゃるんですか?」
女性「…うーん。最近は対戦系のゲームを…。あまり有名な会社ではないので、知らないと思いますけど。」
俺「なんて名前の会社です?」
興味津々の俺。
女性「えっと、○×って会社です」
俺「ぁ、知ってる」
何が『あまり有名じゃない』だ。
ゲーム好きならそれなりに知れてる会社だった。
女性「ご存知でしたか?」
俺「はい。でもすみません。そこのゲームはやった事ないです。」
女性「あらら…。」
俺「すみません……。」
ちょっと気まずくなってしまった。
この空気は嫌なので話題を変えようと思った時
女性「…そ、それよりこの前の事なんですけど。」
俺「え?」
女性「その…会えてよかったです。本当にありがとうございました。ずっとお礼言いたくて」
俺「あ…いや、別に…。」
ドキッとした……。心臓がドクンってするのがわかった。
「会えてよかった」とか女性に言われるのは初めてだったから。
女性「あの日、友達との飲み会の帰りでして」
女性は淡々とゲロッた日の事を話し始めた。
きっと気にしているのだろうと思い、あえてあの日の話題は避けていたのだが、
まさか向こうから話を振ってくるとは
俺「お酒は弱い方なんですか?」
女性「はい。なのであまり飲みません。」
俺「あんまり飲まないタイプなのに、飲まされちゃった感じですか。」
女性「久しぶりに会った友達と居酒屋に行って…、少ししか飲まないつもりだったんですけど…」
俺「…隣に居ただけでもお酒の匂い凄かったですよ。」
女性「はい。私、飲めないわけじゃないんです。飲むとすぐ頭が痛くなるから飲まないだけで。あまり悪酔いしたりもしませんし。」
俺「あぁ・・・そういう事ですか。」
俺「で、その帰りだったわけですね。」
女性「えぇ。店を出た時点で既に頭は痛かったんですけど、改札口を通った辺りで吐き気までしてきて…」
俺「…。」
女性「その日は、仕事で先輩に理不尽な怒られ方して、イライラしてたので…自棄酒飲んじゃいました。」
俺「なるほど…。」
女性「あとは……あんな感じです。」
俺「色々大変でしたね。」
女性「いえ、本当にご迷惑おかけしました。」ペコッ
俺「あぁ、もう謝んなくていいですから」オタオタ
女性は思っていた以上にお喋り好きだった。
俺も会話をしていて楽しかったのだが
どうしても払拭して起きた事があった。
女性の態度からして大丈夫だと思いつつもハッキリさせておきたい事が。
俺「というか、すみませんでした。」
女性「??」
俺「その…身体ベタベタ触ってすみませんでした。」
女性「え?」